自覚症状が出たときは重度の歯周病

歯周病は、歯を支えている骨(歯槽骨という)が溶けてしまう病気です。骨が溶け始める初期のころは痛くもかゆくもありません。痛くなったり、腫れたり、歯ぐきから膿が出るようだと、もう重症です。指で動かして歯が揺れるようだと歯周病の末期です。こうなってから慌てて受診すると治療をするたびに歯をぬくことになってしまいます。しかし、歯周病を初期の段階で見つけ、早期の治療をすれば、歯周病は簡単にコントロールできる病気なのです。

歯肉の病気の種類

歯肉の病気の種類は非常に多いのですが、プラークなしには起こらない炎症とプラークと無関係に起こる病気に分けて考えます。歯肉炎は、プラークによる炎症ばかりではなく、内分泌系の病気に関係するものや服用している薬物に関係するものがあります。たとえば、てんかんの患者さんが服用している抗てんかん薬のフェニトインは服用した患者さんの50%に歯肉増殖をお越し、歯ぐきがごわごわと腫れます。

狭心症や高血圧の治療に使われるカルシウム拮抗剤や免疫抑制剤なども同じような歯肉の腫れを引き起こします。ただし、このような歯肉の炎症は、どれもプラークなしには生じません。

プラークによる炎症が起こりやすくなったりひどくなったりするもので、ていねいなプラークコントロール(ブラッシング)で炎症は改善します。

歯周病はどこからどのようにはじまるのか

歯肉に炎症がおこると、歯と歯茎の境目がはがれ溝が深くなります。これを歯周ポケットと言います。ここではまだ歯を支える組織の破壊は起こっていません。体の免疫システムが最近の毒を排除しようと戦って歯肉の炎症が起きるのですが、免疫システムの反撃によって困ったことが起こります。

免疫システムがめったやたらに反撃して、味方であるはずの歯を支える組織を破壊してしまうのです。歯周炎は、細菌のバイオフィルムが体の裂け目で起こす独特の病気なのです。

ひどくなった歯周病は治る?

歯周病の成り立ちを理解すると、ひどくなった歯周病の治療のむずかしさが理解できます。では、ひどくなった歯周病は治らないのでしょうか。そんなことはありません。ただし、凍傷で腐った指が元通りになるという意味で「なおる」というのなら、歯ぐきが腐ってしまう歯周病も凍傷と同じようになおらない病気です。そして、凍傷になった指と同じように、歯が抜けてしまえば、自然にきれいに治ります。

歯周病で歯がぐらぐら揺れるのは、骨の支えがなくなるからです。体は、細菌のこびりついた歯根を、生体から排除しようとして歯から骨を遠ざけるのです。もし原因となる細菌をすっかり取ってきれいな状態を維持することができれば、病気の進行を止めることもできます。ただし、ひどくなった場合は、この「すっかり取って、きれいな状態をいじする」ことが簡単ではありません。

歯周病の治療は検査から

歯周病の原因は歯周病原性細菌です。細菌なしに歯周病は起こりませんが、細菌だけで歯を支える骨が溶けることはありません。そこにはたくさんのリスク因子がからんできます。歯周病の検査では、歯周病の状態を調べるとともに、このリスク因子を調べます。

リスク因子の一つは遺伝的な素因です。何よりも有効なのは家族を診察することです。家族単位の診察をすることで、遺伝と生活習慣の両方を診査し、改善することができます。

また、喫煙、ストレスなどの生活環境、食いしばりや歯ぎしりなども歯周病の重症化に深く関わってきます。喫煙歴を知ることは、歯周病診査の基本です。

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