歯科と金属アレルギー

金属製の日常生活用品やネックレスや指輪、ピアスなどの装飾品に触れることでアレルギー性接触皮膚炎を生じた場合、これを金属アレルギーと呼んでいます。金属に触れてから数時間から数日後に、接触していた部分から始まって、全身に発赤、腫れ、湿疹などの症状が現れます。
歯科においても、昔つめたアマルガム充填が原因の扁平苔癬(へんぺいたいせんが皮膚科医から報告され、10年くらい前にマスメディアでその為害性が紹介されると、歯科で使う金属材料が注目されるようになりました。すなわち、口腔内の歯科治療時に使用した金属修復物全般におけるアレルギー症状の出現などをテレビや新聞などで取り上げられるようになり、使う金属材料そのものにも注意を払わなければいけない時代となったのです。
実際に、口内炎や口腔扁平苔鮮といったお口の中の症状だけではなく、手や足に発症する掌蹠膿疱症 ( しょうせきのうほうしょう )やアトピー性皮膚炎まで、金属アレルギーとの関連が疑われるケースは年々増加傾向にあります。

歯科で使用する金属
現在、保険制度内で歯科の治療を行った場合に使用される金属は「金銀パラジウム合金」と呼ばれる合金です。歯の詰め物(インレイ)やかぶせ物(クラウン・ブリッジ)に使用されています。成分としては、金が12%、パラジウムが20%、銀50%、銅20%、その他インジウムなど数%が含まれています。
しかし、歯科用金属のパラジウム合金は、欧米などの先進国では毒性が強いとされていることから、実は使用禁止となっているようです。欧米で「パラジウム合金」が使用禁止になっている理由は、金属アレルギーの原因になり得るからです。金属成分が溶け出しやすく、唾液の中に金属イオンが溶け出します。そして、ある日突然に金属アレルギーを発症するのです。症状として現れる部分はお口の中だけではなく、手のひらや足の裏、または、全身に出ることもあります。その多くは、お口の中の金属が原因であるとはまさか思わないので、診断がつかないこともあります。日本人は欧米に較べ異常に花粉症が多いのですが、これも、歯科治療時の金属が原因ではないかとの学者の研究もあります。なにせ、日本人は異常にお口の中が銀歯だらけです。実はそうなのかもしれません。

保険の範囲内で非金属の治療は可能?
平成28年度の診療報酬改定にともない、金属を使わない白いかぶせ物が健康保険適用になりました(といってもセラミックではなく、硬いプラスチック(硬質レジンといいます))。
患者さんの歯やあごの状態、歯並び、保険適用される場合の条件などを総合的に診て、かかりつけ医が判断をします。ぜひ、かかりつけ医に相談することをお勧めします。

金属アレルギーの予防のためには
これまで、金属アレルギーのお話をしてきましたが、虫歯にならない、歯周病予防などが一番の金属アレルギーの予防法です。予防に勝る治療なしです。