歯周病と肺炎の関係

近年、お口の健康や咀嚼機能は、高血圧・糖尿病・老化・認知症などの様々な内科疾患と密接に関係していることが明らかになってきています。
お口の中の歯周病細菌が関与する全身疾患としては①誤嚥性肺炎②感染性心内膜炎③心筋梗塞④糖尿病⑤早産、低体重児出産などがあげられます。歯周病は、歯周病菌が歯肉の隙間の中で増殖し歯肉の炎症や歯槽骨の吸収をきたす疾患ですが、これらの細菌が呼吸器に入り込むと別の病気をもたらすことがあります。歯周病の細菌が肺炎の原因になると聞いて驚く人も多いかもしれませんが、最近になって、高齢者の直接死因の半数を占める肺炎で、歯周病菌が大きく関わっていることがわかってきました。肺や気管は嚥下反射、咳反射などの生理的反応によって、お口の中の細菌が侵入することから保護されています。しかし、高齢になるとこれらの生理機能が衰えるため、自らの唾液や咀嚼内容物をお口の細菌とともに慢性的に気管や肺に吸い込んでしまう、いわゆる誤嚥(ごえん)を慢性的に起こすことが多くなります。その結果、免疫力の低下した高齢者は誤嚥性肺炎を発症してしまうんですね。肺炎は日本人の死因別死亡率の第4位を占め、肺炎で死亡する患者さんの92%が65歳以上の高齢者です。高齢者における誤嚥性肺炎による死亡が社会問題となってきています。誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌です。したがって、誤嚥性肺炎の予防には、徹底した歯ブラシによる口腔清掃つまりプラークコントロールが不可欠です。口腔ケアーによる口腔の清潔保持が気管に落ち込む細菌の総数を減らす有効な方法であると考えられます。ただ、嚥下反射や咳反射の低下は加齢に伴う生理的な現象の一つと考えられるので回復事態が直ちには困難なものとなっていますから、誤嚥性肺炎の現実的で有効な予防法は口腔ケアーに力をいれることなんですね。また、忘れてはならないのがの入れ歯付着物などの汚れで、これも細菌の塊ですから、入れ歯清掃も誤嚥性肺炎予防には欠かせないものであるというわけです。